本田技研工業、エキスパートの知見を世界中の現場へ

―リモート解析で実現する新しい品質対応

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本田技研工業株式会社の市場品質データ解析部は、世界中の市場から集まる品質関連データを分析し、品質課題の早期把握と原因解明、対策の立案を担う部門です。販売店や各国拠点、関連部門と連携しながら対応を推進し、グローバルでの品質向上とお客様に安心して車をご利用いただくための活動を担っています。
今回インタビューにお答えいただいた
市場品質データ解析部
チーフエンジニア 堀諭史氏【右】
アシスタントチーフエンジニア 須山ホドリゴ氏【左】

目指したこと

導入後の効果

市場品質データ解析部の役割

ー 市場品質データ解析部とは何をしている部署ですか

堀氏:お客様がお車を使用されていて「いつもと何か違う」と感じた際、 多くのお客様はHonda販売店で点検を受け、必要に応じて部品交換などの修理対応をされています。

私たちは、世界中のそうした情報や交換部品を解析しています。関連部門と連携しながら、お客様が感じた違和感の根本原因を突き止め、二度と同じことが起きないように対策することを役割としています。
そうすることで、お客様に安心して車に乗り続けていただくことを使命としています。

ー とくに意識しているのはどんな点ですか

堀氏:世界中で発生した不具合を、最速で解決できる環境を構築することです。

我々は普段から膨大な品質データを分析していますが、 常に最新の情報や先進技術を取り入れながら、どの地域で発生した事象でも高いパフォーマンスで解決できるようにしています。
今回のインタビューは
動画でもご覧いただけます

品質こそが価値の土台。だからこそ早期解決にこだわる

ー 不具合の早期解決を重視しているのはなぜですか

堀氏: Hondaの企業理念は、 「商品や技術、サービスを通じてお客様や社会に価値を提供すること」です。その土台となっているのが品質であり、品質の確保なくして、Hondaらしい価値の提供は成り立ちません。
市場で不具合が発生すると、お客様の日常に直接影響を及ぼしてしまう可能性があります。
だからこそ、問題が小さい段階で兆しを捉え、 迅速に対応することに注力しています。

「リモート解析」という新しい品質対応モデル

ー 不具合の早期解決はどのように実現させているのですか

須山氏:私たちは「グローバルでの即時対応力」を重視した取り組みとして「リモート解析」を推進しています。

ー リモート解析とはどんな取り組みですか

須山氏:世界中で発生している不具合情報は、日々モニタリングしており、各国の品質部門と連携しながら状況を把握しています。
その中で、現地だけでは対応が難しい、あるいは解決までに時間がかかると想定される案件については、日本の解析エキスパートがサポートし、不具合の早期解決を図っています。
従来は、エキスパートが現地へ出張して対応するスタイルが中心でしたが、ビザの取得や長時間の移動など、時間的な制約が避けられないという問題がありました。
そこで私たちは、「日本にいながら、世界各国の現場と即座につながり、現地メンバーをリアルタイムで支援できる仕組みがあれば、より早く、より多くのお客様の安心・安全に繋がるのではないか」と考え、リモート解析というこれまでにない解析手法の構築に取り組みました。

ソリューション選定で重視した2つの要件

ー 新しい手法の構築って大変そうですね。どうやって成功させましたか

須山氏:単にツールを導入するのではなく、ソリューションの選定から業務プロセスの設計、実際の運用までを一貫して検討し、形にしてきました。
ソリューション選定にあたっては、2つの点を重視しました。
  • 事前の複雑な準備や説明をしなくても全世界と即時につながること
  • 解析エキスパートの指示や意図が現場スタッフに正確に伝わること
の2つです。
そうした条件を満たすソリューションを検討する中で出会ったのがCareARです。
CareARを導入することで国境を越え、現地メンバーと同じ視点で状況を共有しながら、的確な判断と指示を行うことが可能になりました。
このように、データ・人・デジタル技術を組み合わせることで、私たちは市場不具合の早期解決という課題に挑戦しています。

CareARが実現した「誰でも・すぐ・正確に伝わる」遠隔支援

ー CareARのどんな点が気に入っていますか

須山氏:CareARで最も気に入っている点は、大きく三つあります。
一つ目は、圧倒的な“接続の容易さ”です。
CareARは、リンクを送ってクリックするだけの、わずかなステップで接続できます。そのため、相手側へ前もってアカウントを発行したり、接続方法を細かく説明したりする必要がありません。
世界各国のディーラー、サプライヤー、解析部門など、立場やITリテラシーの異なる多くの方々と接続する私たちにとって、「リンクを送るからクリックしてください」だけでつながれる利便性は非常に大きな価値です。これにより、リモート解析を“特別な対応”ではなく、日常業務の一部として活用できるようになりました。
二つ目は、レーザーポインターやARアノテーションといった機能です。
これらの機能によって、現地の作業者が見ている映像に対して直接書き込みや指示ができるため、「ここ」「それ」「これ」といったシンプルな言葉でも、解析エキスパートの意図が正確に現場へ伝わります。
遠隔でありながら、あたかも同じ場所に立って一緒に見ているかのような感覚でコミュニケーションができる点は、リモート解析において非常に重要だと感じています。

ー 三つ目は何ですか

須山氏:三つ目は、専用デバイスを必要とせず、お手持ちのスマートフォンやタブレットだけで利用できるところです。
グローバルで即座につながることが求められる私たちにとって、専用デバイスの購入や配布、管理が不要である点は非常に大きなメリットです。

新たな設備投資や複雑な導入準備がいらないため、参加いただく拠点にとっても心理的・運用的な導入ハードルが大きく下がりました。

実際にCareARを使って作業している様子は動画からご覧いただけます

関係者を同時接続し、その場で意思決定する体制

ー 他にも気に入っている点はありますか 

須山氏:私たちはリモート解析において、ディーラースタッフ、サプライヤー、開発メンバー、製造工場メンバーなど、関係するさまざまなステークホルダーを同じセッションに招待します。そして、それぞれの専門視点で事象を確認するプロセスを構築しています。
必要に応じて各領域の決裁者にも同席してもらい、現場で即断即決できる体制を整えています。こうしたスピード感のあるプロセスを実現できているのも、CareARの接続容易性と多機能性があってこそだと考えています。
さらに、CareARそのものだけでなく、正規代理店であるCBAさん(株式会社コミュニケーションビジネスアヴェニューの略)の存在も非常に大きかったと感じています。
私たちは日々、スピードが求められる品質対応の現場にいます。そのため、一緒に取り組むパートナーにも同じスピード感を持って対応していただけることがとても重要です。
これまでさまざまな要望や無理なお願いもしてきましたが、その都度、非常に迅速かつ柔軟に対応していただきました。そのスピード感と伴走してくれる姿勢があったからこそ、CareARの導入と定着を実現できたと考えています。
CareARとCBAというパートナー、その両方があってこそ、現在のリモート解析の取り組みが成り立っていると感じています。

準備日数約9割削減。スピードと意思決定を同時に改善

ー CareARを使用してどんな効果を実感していますか

須山氏:海外支援において、ビザ取得やフライト手配、現地への移動といった一連の準備が不要になりました。そのため、支援開始までにかかる準備日数が、従来と比べて約9割削減できていると感じています。
従来は、エキスパートが現地へ出張するために移動時間や調整時間を要していました。しかし、CareARを活用することで、そうした移動に関わる時間とコストを大幅に削減できています。
それだけでなく、関係者が必要なタイミングですぐに集まり、現場の状況をリアルタイムで共有しながら、その場で判断・意思決定ができるようになった点は、大きな効果だと実感しています。

ー 嬉しいです。他にはどんな効果がありましたか

須山氏:人材育成の面でも非常に大きな価値を感じています。

CareARでは、エキスパートが行った指示や判断の過程がすべて動画として記録に残ります。これにより、単なる結果だけでなく、「なぜその判断に至ったのか」「どこを見て何を考えたのか」といった思考プロセスまで可視化することができます。

エキスパートの知見やノウハウは属人化しやすいものです。そのため、次世代への伝承が組織として大きな課題でした。しかし、CareARで蓄積された録画データは、単なる履歴ではなく、将来に向けた重要な情報資産となっています。
若手が過去の解析をいつでも振り返り、学ぶことができる環境が整ったことで、人材育成のスピードと質の両面が大きく向上しました。
このように、CareARは単なるリモートツールではなく、早期不具合解決、コスト削減、そして人材育成までを支える、私たちの品質活動に欠かせない基盤となっています。

14拠点へグローバル展開

ー 現在の新たな取り組みについてご説明ください

須山氏:CareARの導入によって、早期不具合解決やコスト削減、人材育成といった面で大きな効果を実感することができています。そのため、現在はその取り組みをさらに拡大しています。

ー どのように拡大されていますか

須山氏:具体的には、世界各地にある解析部門、14拠点へCareARを展開し、グローバル全体での本格運用をスタートしております。
各国の解析部門がCareARを活用することで、その国・地域単独の品質活動においても、より迅速で質の高い対応が可能になりました。
これにより、日本主導だけでなく、各拠点が自律的に品質課題へ向き合い、結果として、より多くのお客様満足につながる体制が整いつつあります。

ー 素晴らしいですね。他の事業にもなにか良い影響はありますか

須山氏:私たちは四輪の品質を専門とする部門ですが、他事業にも展開を始めています。
事業領域が異なっても、「早期に現場の状況を共有し、専門家の知見を即座に届ける」というCareARの価値は共通しています。その価値が、品質活動全体の底上げにつながっていると感じています。
このように、CareARを単なるツールとしてではなく、Honda全体の品質力を高めるための共通基盤として展開している点が、現在の新たな取り組みです。
今後も事業や地域の枠を超えた連携を強化し、より高いレベルでお客様の安心と信頼に応えていきたいと考えています。

動画データを活用し、AIが支援する品質活動へ

ー 今後の展望をお聞かせください

堀氏:我々が推進しているリモート解析が広く普及することで、解析の成功事例や失敗事例を含む多くの動画データが蓄積されていきます。
私たちは、これらの動画データを構造化・ナレッジ化することで、エキスパートが行ってきた判断や活動の暗黙知を活用できるようにして、AIが人をサポートする世界の実現に取り組んでおります。
これまでの「人が人を支援するリモート解析」自体を改革していきます。 こうした新しい価値提供を通じて、Hondaの市場品質活動を進化させるだけでなく、自動車産業全体の品質向上をめざし、業界のDX活動をリードする存在になっていきます。

導入事例

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