「小さなトラブルや単純な点検作業による現場行きを減らしたい」「お客さまへのサポートをお問い合わせの前から始めたい」、このように考える会社は少なくありません。お客さまへのサポート体制や、保守業務が強化されていればいるほど、ついて回る問題とすら言えるかもしれません。
この記事では、「シフトワークレフト」をキーワードに、最新のAR技術を活用した遠隔支援についてご紹介します。シフトワークレフトとは何か、なぜ重要なのか、AR技術による遠隔支援にどんなメリットがあるのかをご案内します。
シフトワークレフトとは?
「シフトワークレフト(Shift work left)」という言葉をご存じでしょうか。欧米を中心に使われ始めている新しい用語です。「技術者が現場に行って提供する『サービス』を前倒して提供しよう」という考え方です。
よく似た用語である「シフトレフト」は、もともとIT業界で使われていた言葉なので、ご存じの方も多いかもしれません。「シフトレフト」は、ソフトウェア開発の分野で、通常なら開発の中期・後期で行っていたセキュリティチェックテストなどの工程を、前倒して実施することを表す用語です。
ですから、「シフトワークレフト」は、「シフトレフト」の考え方をビジネスの現場に応用させた用語・考え方ということです。
機器の保守サービスを例に考えると、技術者が現場で行うはずの「機器の状態を確認すること」「問題の原因を発見して修正すること」といったサービスを、今よりも前倒して提供することです。
なぜシフトワークレフトが必要?
シフトワークレフトの実現は、近年多くの企業が抱えやすい以下のような悩みにアプローチする助けとなります。
- 機器の保守や保守サービスをもっと効率的に行いたい
- 保守サービスの利用数を減らしたい
- 機器トラブルの問い合わせを減らしたい
- 技術系スタッフの人手が足りない/今の人材をより効率的に活用したい
- FAQの見直しをしたのに、顧客の自己解決率が上がらない
- ナレッジ、技術を次世代へ効率的に継承したい
- コスト・時間を節約しつつ生産性を上げたい
- シニア世代のサポートをしたい
現状では、何かしらの技術的なトラブルが発生しても、技術者が現場へ赴くのは最終段階であることが多かったのではないでしょうか。
結果、トラブル発生時から技術者が現場へ来るまでの間、お客さまはトラブル対応に追われます。機器が使えない場合は適切な場所への連絡が必要になります。トラブルに多くの時間と労力をかけなければなりません。精神的ストレスも感じます。
シフトワークレフトの実現によって、技術者からの直接サポートをもっと早い段階で受けられるならば、お客さまのストレスは大幅に軽減されます。企業はお客さまへよりスピーディーでエフォートレスなCXを提供できます。
シフトワークレフトは、技術者にとってもメリットがあります。トラブルに早い段階で着手できるので、より正確な情報をキャッチできたり、お客さまの気持ちや時間に余裕がある中で作業に取りかかったりできます。
しかし、シフトワークレフトの実現は簡単ではありません。どのようにサポートの前倒しを実現できるのでしょうか。
シフトワークレフトを「CareAR」で実現する方法
トラブル発生時、または点検時に現場作業が必要な分野として、保守サービスを例に考えてみましょう。
点検の場合もトラブル対応の場合も、まず現場や機器の状況を正確に把握することは必須事項です。しかし、いざ現場に行ってみたら技術者が直接対応するほどのことではなかった…といった事例はありませんか。
TSIAの調べによれば、出張サービスや現場派遣の25%が不必要だったという結果が出ています。
もしAR遠隔サポートツール「CareAR」を活用するならどうなるでしょうか。
トラブル対応に必要なナレッジや技術をもつスタッフが、CareARを使って遠隔で状況把握できる環境を整えられます。すると、技術者が現場へ行く必要があるのかどうかを前もって判断できます。さらに、問題の緊急性についても適切に判断できます。言わばトリアージができるのです。必然的に作業効率はアップします。
人手不足の中で無理に人員を割く必要もなければ、出張にかかるコストを心配する必要もありません。遠隔で的確なサポートが提供できるのであれば、トラブル発生からすぐにサービスを開始することができます。結果的に「現場で行う保守サービスを前倒せた」ことになるのです。
さらに、CareARによって次にあげる導入効果を体験できます。
- 機器の保守・点検、保守サービスの時間的、金銭的な効率をアップできる
- 初回解決率・自己解決率の向上を図りつつ、呼量を削減できる
- 限られた技術者を効率的に活用し、スタッフの安全も確保できる
- 次世代人材の育成・教育を実践ベースで行える
- 出張にかかる諸経費を大幅にカットできる
- シニア世代のサポートにも有効
上記の導入効果に注目しながら、CareARの保守サービスに役立つ機能を紹介していきます。
【CareAR Assist】
遠隔で状況を把握するために役立つのが、CareAR Assistです。CareARは、デスクトップ、モバイルアプリ、スマートグラスやドローンにも対応しており、タブレットやスマートフォンなどをかざすだけで最新のAR技術が利用可能です。
AR機能により、現場の状況をリアルタイムで確認しつつ、問題点がどこにあるのかを視覚的に示すことができます。
CareAR Assistにより、出張の必要性についてより正確な判断を下しやすくなり、状況の把握や分析にかかる時間のカットも見込まれます。また、何が起こるか分からない現場に対しても遠隔でアプローチできるため、スタッフの安全を確保しつつ、迅速に対応することが可能です。
すでにCareAR導入で以下のことが達成されています
・遠隔サポートによる解決率を85%向上
・解決までの時間を63%短縮
・担当者の現場派遣を50%削減
【CareAR Instruct】
技術者またはベテランの技術者が現場へ行く必要がないと分かったとしても、トラブル解決や点検のためにはサポートが必要です。そこでCareAR Instructが効いてきます。
ビデオデータによる指示と案内が、タブレットやスマートフォンの画面上に流れるので、スキルや経験値の浅い技術者、製品に関する知識や慣れが全くないお客さまでも、必要なタスクと作業を的確にこなすことができます。
お客さまがマニュアルやFAQの延長線としてCareARを活用し、自己解決できる環境を作っていれば、技術者が軽度のトラブルに対応する必要はなくなります。お客さまが完全に自己解決できるのであれば、カスタマーサポートへ連絡することすらなくなるでしょう。CareAR導入は呼量削減に繋がります。
「シニア世代のサポート」にも有効です。電話やチャットといったチャネルで遠隔サポートをする体制はすでにあるかもしれません。しかし、不慣れな機械を目の前に、耳慣れない/見慣れない言葉を使われながらサポートされたところで、シニア世代のお客さまにとってエフォートレスであるとは言えません。「画面の指示通りに目の前の機器を操作すれば良い」という方が圧倒的にシンプルです。
CareAR導入により、初回解決率が82%向上、呼量が15%削減されています。
※一般的に70%のお客さまがセルフサービスのチャネルを利用しているものの、問題解決に成功しているのわずか9%です(Gartner)
CareARを使ってユーザーが必要な指示を順に追っていける形のガイドを作成していれば、ユーザーが誰であろうとステップを抜かしてしまう心配はありません。セルフガイド式のビデオ案内により、ベテランの技術者から経験の浅い技術者に技術やナレッジを迅速に伝達することも容易です。実践教育を軸としながら、次世代へ効率的にノウハウを継承していくことが可能になります。
CareARによりCSAT(顧客満足度)を40%向上させています
【CareAR Experience Builder】
インストラクション表示などのワークフローを、Webベースで、かつノーコードで手軽に構築できます。メイン操作はドラッグアンドドロップだけ。作業に必要な各ステップも、グラフィカルなツリー表示で設定可能です。
「CareARを使用するために新たな技術スタッフやナレッジが必要」といった本末転倒なことはありません。
【高いROI】
Xerox社が2022年の1年間でCareARを使用しながらROIを計算したところ、1万人のフィールドエンジニアがCareARを使用し、実に4億円のコストカットを果たしました。
CareAR導入事例:Visioneers社
Visioneers社は、ドキュメントスキャナーのリモートサポートを提供する会社で、Xerox社と提携しています。
課題:ハードウェアの問題に遠隔で対応しようとすると、顧客サイドの情報があまりに少なく、視覚的に問題を把握できなかった。そのため、顧客サイドのダウンタイムが長引いた。技術者の派遣やスキャナー交換の必要も頻発し、結果的にコストが増大していった。
CareAR導入後:CareAR Assistを導入した結果、リモートでリアルタイムのサポートができるようになった。顧客サイドの問題に関しても、実際にARで「診る」ことができている。2021年の9月にCareAR Assisを導入して以来、同社では数千ドルのコスト節約を果たし、331%のROIを達成。修理やトラブル対応のために技術者を派遣することも減り、問題はフルリモートで解決、スキャナーの交換率を劇的に減少させることにも成功した。
最後に
CareARは、最新のAR・AI技術を通して、より高度な遠隔作業を可能とします。多岐に渡ったメリットと可能性ををもつCareARですが、海外ではすでに高い評価を受けています。
最近では、Frost&Sulivanの「2023 Enabling Technology Leadership Award in Augmented Reality」を受賞しました。Frost&SulivanによるCareARの講評では、「ARといったテクノロジーを使用したCareARは、新しい方法で顧客を惹きつけ、CSAT、エンゲージメント、ブランドロイヤルティーを高める」と評されています。
高いAR技術が評価される一方で、SDGsへの貢献に関しても多くの賞を受賞しています。環境問題がクローズアップされる中にあって、まさにタイムリーな取り組みであると言えるのではないでしょうか。
CareARによる遠隔作業や支援は、多面的かつタイムリーなメリットをいくつも持ち合わせているということです。遠隔サポートを利用してシフトワークレフトを実現し、作業効率やCSは向上させつつ、コストや呼量は削減していきましょう。