EV充電器のメンテナンスにおける3つの課題|CareARで解決

世界的には一般的に浸透しつつある「EV車」ですが、日本は「EV敗戦を迎えようとしている」とすら言われ始めています。残念ながら、各国のEV浸透率を見ると日本は出遅れていると言わざるを得ません。

東京電力が発表しているデータを見ると、2023年上半期における日本のEV販売台数は約1.67%ですが、2022年の時点でアメリカでの普及率は約5.8%、ヨーロッパでは約12.1%、中国では約20.0%にまで上っています。

日本でのEV普及が思うように進まないことにはさまざまな原因が考えられます。その一つはEV充電器にまつわる課題です。

この記事では、EV充電器が抱える課題を3つ解説し、費用対効果の高い「CareAR」というARソリューションを紹介します。EV充電器の開発メーカーはもちろん、EV充電器の設置を検討している自治体、企業、施設の関係者の方も参考にしてください。

EV充電器のメンテナンスにまつわる3つの課題

EV充電ができるスポットは、2014年~2015年にかけて各地で急激な増加を見せました。そこから右肩上がりに充電スポットが増加していましたが、2020年には減少を見せ始めます。2023年7月時点での充電スポット数は、19,471拠点となっており、6月からは278拠点の減少となりました。

なぜEVヘの注目度が上がっているにも関わらず、充電スポットの減少が続いているのでしょうか。

一つの要因は、EV充電器の平均寿命にあります。EV充電器の平均寿命は7~9年と言われていますが、急速な普及が見られた2014年あたりから数えると、2022年~2023年あたりで寿命を迎える充電器が多く存在するからです。「寿命を迎えるなら、新しい設備と変えれば良い」と考えますが、単純にはいかないのが現状です。どういうことでしょうか。EVにまつわる課題を3つ解説します。

1. 定期メンテナンスの必要性

先ほどEV充電器の平均耐用年数7~9年と説明しましたが、それに基づいて、メーカーとの保守契約も8年前後であることが一般的です。ですから、2014年頃に導入されたEV設備の多くは、すでにメーカーとの保守契約が終了しているのです。

しかし、保守に関する問題は契約満了にとどまりません。「導入時には存在していたEV充電器の開発企業の倒産、それに付随するメンテナンス・修理依頼先のロスト」という問題が発生しているのです。

開発企業の倒産によるメンテナンス・修理依頼先がないというのは深刻な問題です。EV充電器の設置には専門的な知識と技術が必要になるうえ、定期的な保守が必要とされるからです。

現状では点検に関する法的な決まりはないものの、日常点検はもちろん、1ヶ月や1年単位での定期的な保守が、充電器を安全に長く運用する秘訣です。そして、何か重大な問題が発生した際に、開発メーカーからのサポートを期待できないというのは、EV充電器の安全な使用という観点からもリスクが生じます。

現在は道の駅やパーキングエリアにおける「充電待ち」が社会問題にもなっているため、充電器の複数口化、高出力化が推奨されて始めています。しかし、充電器の中でも急速充電器の場合、構造が複雑になり、部品も多くなるのでメンテナンスが大変になります。故障の発生や部品の傷みも、普通の充電器に比べると多くなりがちです。

とはいえ、業界全体として急速充電へと舵取りがされているので、メンテナンスにおいてもいかに手早くかつ正確に、そして定期的に行えるかが、今後のEV浸透でのカギを握るでしょう。

2. 設置環境

ご存じの通りEV充電器は基本的に外に設置されています。当然ながら、最新の技術を備えた設備が風雨の中で野ざらしになっていたり、誰の手にも簡単に触れられる環境にあったりすると考えれば、さまざまな原因による故障の頻度は高くなります。

日本よりもEVが浸透しているアメリカを例に、サンフランシスコ・ベイエリアでの調査によれば、高速充電スタンドの4台に1台が常時故障しているといいます。

日本で今後どれだけ充電スタンドが増えたとしても、各スタンドの信頼性が低ければ、修理の問題や、この後解説する採算化の問題を複雑化させるだけになります。長い目で見れば、充電設備の設置環境の改善を図る必要性もありそうですが、まずは故障時に素早く対応、応急処置ができ、効率よく修理を行える体制作りが必要となるでしょう。

3. 事業としての採算

EV充電設備の設置については、国や自治体からの補助金があるとはいえ、整備にかかるコストは30万円前後(メーカーにより異なる)です。月額では最低6万円ほどかかるとされています。

少なくとも2014年頃と比較すると、EV充電器管理者の自己負担額は増加傾向にあります。体感で自己負担額の増額を感じておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

一方で、利益という利益は、充電サービスを利用する顧客からの利用料のみです。一般的な利用料は、充電時間での換算か、回数制または月額制であることが多く、決して大きいとは言えません。

EV自動車と充電器の普及が進まない日本においては、「充電に苦労しそうだからEV自動車にはまだ手を出さない→EV充電器利用者の母数が思うように増加せず採算が合わない」といった流れで、完全に足を引っ張り合って泥沼化しているのが現状です。

泥沼化による採算の取れなさを理由に、充電器の高稼働が見込めるコンビニエンスストアや大規模店舗、サービスエリア・パーキングエリアなどでも設置を渋られてしまう傾向にあります。国や自治体がEV充電器の普及を進めようとしても、採算が合わないばかりに解約されるケースも少なくありません。

また、設置やメンテナンスにもコストがかかるEV充電器ですが、充電ケーブルは消耗品です。ケーブルの交換時期を見誤ることは、大きな故障や利用者からのクレームにも繋がり、事業としてのマイナスに直結する恐れがあります。ですから、定期メンテナンスの費用とも合わせると、ランニングコストは高額になってしまいます。

現在の状況では採算化が難しい以上、長期的な運用を目指すためにはコストカットが必要不可欠です。ですから、日頃から効率的なメンテナンスによって重度の故障を避けつつ、EV充電器に関するトータルでのコストパフォーマンスアップを狙うことが重要です。

EV充電器のメンテナンスに役立つCareAR

解説した3つの課題と解決していくための共通項は、「効率的で定期的なメンテナンスを実現すること」と「故障時のスピーディーな対応を実現すること」の2つです。そして「費用対効果の良さ」を前提にする必要もあります。

ここからは、この2つのポイントを押さえられるソリューションとして「CareAR」を紹介します。CareARがEV業界でどのように役立つのかをぜひご覧ください。

機能1 CareAR Assist

CareAR Assistは、遠隔地にいる技術者からARを使ったサポートを提供できる機能です。サポート対象となる物体、たとえばEV充電器の問題箇所や操作するべき場所、確認するべき場所をARでアノテーションしながら指示を出していけます。

CareAR Assistは、スマートフォン、タブレット、スマートグラスやドローンなどの機器にて使用可能なので、EV充電器がある場所や近くいるスタッフが持っている端末に左右されることなく、即時サポート体制を展開できます。EV車のユーザーにとって車を充電できないということは、「当座の間身動きがとれない」ことを意味する場合もあるため、メンテナンスや修理にはスピード感が求められます。ですから、サポートの即時展開が可能であることは、EV充電器のメンテナンスにおいては非常に強みです。

EV充電器が設置されている場所には、すぐにはたどり着けない山間部や、高速道路内のサービスエリアが含まれます。CareAR Assistを活用すると、現場とリモートで繋ぎつつ、専門知識を持った技術者が遠隔でサポートを行うことが可能です。ただ単にリモートでサポートが可能なだけでなく、AR機能によって正確な情報を伝達することもできます。設置されている機器が急速充電器で構造が複雑だとしても、CareAR Assistの画面上にはどのケーブルを触るべきか、どのパーツを確認するべきかが視覚的に分かるように指示できます

CareAR Assistはアプリにもブラウザにも対応している上、機能への参加者数も無制限なので、どこからでも何人でもサポートを展開していけます。

機能2 CareAR Instruct

CareAR Instructは、ARガイダンスをステップごとに事前作成し、マニュアルをAR/2D/3D/動画のかたちで画面上に映し出す機能です。

経験が浅かったり専門知識が少なかったりする若手スタッフや、専門的なノウハウを一切もたないEV充電器管理者(施設管理者や店舗オーナーなど)でも理解できるマニュアルを提供できることが強みです。

充電器に対するサポート/ガイダンスがステップバイステップで「見える化」されるので、必要な操作を的確に行っていくことができ、若手スタッフや充電器管理者の自己解決率向上や応急処置的な対応を可能にします。

セルフガイド式のビデオ案内が提供されることにより、ベテランスタッフからのナレッジ伝達・継承や、人材育成も効率的に行えるので、社会問題になっている「技術継承問題」にアプローチできます。

現在は「EV充電器がどこにでもある」というほどは普及していないので、仮に企業としてあまり人材不足感を感じていないとしても、今後EVがより浸透していった際には、即戦力となれる技術者たちが多く必要になるでしょう。いたるところでメンテナンスや派遣修理の必要が生じるはずです。CareARによるトレーニングや技術継承を早くから行えていると、EV浸透時の人材不足に備えて万全な策を講じることが可能です。

ガイダンス通り正確に作業を行えているかどうかは、特許取得済みの「CareAR Computer Vision AI」によって検知するので、「必要な作業を抜かしてしまった」といったヒューマンエラーを防げます

CareAR Instructでは検索機能で関連性の高いコンテンツを呼び出すことが可能なため、業務効率化と生産性向上を期待できます。

機能3 CareAR Experience Builder

ARやAIといった最新技術を詰め込んだCareARですが、導入後のセットアップは非常に簡単です。インストラクション表示などのワークフローを、Webベースかつノーコードで構築することが可能です。

CareAR導入に際して、「うちにはIT人材がいないからうまく導入できない」「導入のためにIT人材を採用、または既存スタッフから選任しなければいけない」といった状況にはなりません。ドラッグアンドドロップができれば、誰でもワークフローを作れるので、専門知識をもつ人材を新規採用・選任する必要はないのです。人材不足、若手不足に対処しながらでも使用できます

CareARはコスパが良い!

最後に、CareARの実績をデータで紹介します。

CareARは…

派遣業務を50%削減

サービス時間を63%短縮

初回解決率は82%

リモート解決率85%

CSATの増加は40%

約1年間(2022年1月~2022年12月)で594,800kgのGHG排出量を回避

21,000件の派遣を削減

非常に高いROI

→CareARを導入している米国Xerox社では、1年間CareARを1万人のフィールドエンジニアで使用し、約4億円のコストダウンに成功した

ご覧の通りCareARは、派遣業務やサービスあたりの時間、コストといった下げたいものを半分以上に下げられます。解決率や顧客満足度といった向上させたい数値は大幅に上げることができるARソリューションです。

1年間で実現したコストダウンについて考えても、CareARの費用対効果は非常に優秀と言えます。

各企業のご予算に合わせたプランのご案内もできますので、お気軽に弊社までご相談ください。
▶お問い合わせはこちら

さまざまな業界におけるCareAR導入事例はこちらからご覧ください。

EV充電器のメンテナンス需要が高まる理由

昨年の2022年は「EV元年」とも言われており、多くの国内大手メーカーから新型EV車が発表されました。

引用:ENECHANGE

上の表を見ると、2022年12月の販売比率は過去最高の4.09%を記録しており、年間販売台数は95,426台で、前年比2倍以上となっています。発表された新型EV車の数だけでなく、販売数の変化を見ても、EV元年と言われるのも納得の数値でしょう。

EV浸透の動きは国内で強まってきています。

政府は、充電スタンドを今の5倍の15万基まで増やすことを目標に掲げ、東京都は一定の新築マンションや戸建て住宅に充電器の設置を義務付けることを目指しています

EV浸透の波は近いうちに改めて起きるはずですし、次に来る波は前回よりも大きくなるであろうことは想像に難くありません。

昨年から見て「EV2年」とも言うべき今年も、各国のさまざまな企業から新型のEV自動車が発表されており、業界で覇権を握る国は欧米とは限らなくなってきています。まさに先日、ベトナムのEVメーカーが米ナスダックに上場し、時価総額で独フォルクスワーゲンや米フォードを上回ったばかりです。EV市場での覇権争いは今後新たな動きを見せていくのかもしれません。

最後に 

近年、EV業界ヘの参入は自動車メーカーにとどまらなくなってきています。ソニーグループはホンダと共同開発で新製品を発表しており、Apple社もEV業界に参入しようとしているとかいないとか…。

欧州と中国ではすでにEVの普及がかなり進んでおり、この点での日本は比較的後進国となりつつあります。イギリスや中国では、補助金の増額と環境に関する規制強化を並行して行うことで、EVの普及を成功させています。

とはいえ、日本においても、東京都では10月より都有施設におけるEV充電設備を有料化すると発表しており、2025年からは新築マンションでのEV充電設備設置を義務化するとも発表されているのです。

私たちの日常生活へのEV浸透は、間違いなくこの数年で進むことでしょう。急激なニーズの高まりが予測されるEV充電器と、そのメンテナンス・修理業に対していかに素早く効率よく対応できるかは、今どれだけ費用対効果を重視した準備を整えていられるかにかかっているのかもしれません。

 

 

 

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